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# カリフォルニア見聞記(アメリカの社会と労働者事情)(2)

UCLA 移民フォーラム

 前回、カリフォルニアのランチについて書きましたが、ディナーはどうだったの?と言われそうです。夜ご飯は、スーパーのお惣菜やレストランのテイクアウトをホテルの自室で食べました。この年齢になると、やっぱり家飲みが一番です。
 さて、日本からロサンゼルスに着いたその日は、時差ボケの頭をなんとか持ち上げて、夕方、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で催された移民フォーラム(Immigration Forum)に行きました。皆さんは、ダカ(DACA)って聞いたことありますか?正式にはDeferred Action for Childhood Arrivalsと言います。
 多くのメキシコ人が、アメリカの滞在許可書をもたずに入国していること、トランプ大統領が国境に壁を建設しようとしていること、についてはご存知の方も多いと思います。滞在許可書のない人々は、国外送還の対象になります。とはいえ、滞在許可書をもたない多くの外国人が、当局の目を逃れ、アメリカに居住し、労働し、生活しています。
 DACAは、滞在許可書をもたない親に連れられて入国してきた子どもたちには、国外送還処分を求めない、というものです。2012年にオバマ政権が導入しました。今までにこのプログラムに申請した人はなんと80万人。その内の70万人がメキシコ移民の子どもたちだそうです。2年ごとに更新が必要なので、永住を保証するものではありませんが、合法的に労働する権利があるので、経済的にも安定し、雇用主の健康保険組合への加入を可能にし、州によっては、運転免許を得ることや、州の各種サービスをアメリカ市民と同等に受けることができるようになりました。このような不法移民の子どもたちを、アメリカではDreamersと呼んでいます。過去に、このような子どもたちが永住権を得ることを段階的に可能にしようというDREAM法(Development, Relief, and Education for Alien Minors Actの略)が不成立に終わったことを受けて、DACAが導入されたことからついたあだ名ですが、アメリカンドリームを胸に抱く若者たち、という意味も込められているのかもしれません。
 UCLAの移民フォーラムが開かれたのは、3月5日。トランプ大統領が、DACAを廃案にするよう議会に求めた際に設けた締切日当日でした。UCLAの労働センター(UCLA Labor Center)が共催していたので、UCLAの大学生の他、労働組合の活動家も駆けつけ、会場は熱気に溢れていました。学生たちがどんどんステージに上がり、自分の経験を語ります。お母さんと国境の砂漠地帯を何日も歩いてアメリカに来た話。みんなで一生懸命に働いて、大学に入学し、仕事をしながら頑張って勉強している話。UCLAは一流大学ですので、どんなに頑張ったことか、本人や親の苦労は想像に難くありません。
 でも本当にDACAが廃止されたら、彼らも国外送還処分の対象になるので、こんなにおおっぴらにステージで語っていて大丈夫なんだろうか、と心配になりました。私はビデオを持っていたので、主催者に撮影して良いか聞いたのですが、どんどん撮って、と言われました。ステージからのシュプレヒコールの呼びかけでは、「We are undocumented, unafraid!(我々は滞在許可はもっていない、でも恐れない!)」とみんなが声を合わせました。また、「We are leaders!(我々はリーダーだ!)」とも。声を挙げることを恐れず、それぞれのコミュニティーで、リーダーとしてみんなを引っ張っていこう、ということでしょうか。学生たちの力強さに時差ボケ心が強く揺さぶられました。
 さて、このフォーラムで初めて知ったのは、DACAを始めたオバマ大統領は、実は歴代大統領の中で最も多くの国外送還処分を行った、ということ。学生たちは、「政治家なんか頼ってはだめだ、自分たちの力で頑張らなければ」、と口々に言っていました。ニューヨークでアラブ系移民の権利擁護に活動している学生は、「民主党の政治家たちは、頑張れ、応援するから、と僕らを前に押し出して、背中にドスッとナイフを突き立てるのさ」と物騒な表現さえ用いていました。学生が口にする政治家に対する不信感は、一昨年の大統領選挙で、既存政治家とは違うカラーを強く打ち出したトランプ候補とサンダース候補が、若者の支持を集めたことを思い出させました。


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移民フォーラムでのパネルディスカッション


国外退去 

国外送還処分件数の推移(縦軸は、千人/年)

 ところで、DACAは廃止されたのでしょうか。実は、各地でDACAを守るための裁判闘争が繰り広げられました。UCLAもその一角をなすカリフォルニア大学も原告になっています。今から2週間ほど前の4月24日、ワシントンにある連邦地方裁判所で、DACAは守るべき、という判決が出ました。その前にニューヨークとサンフランシスコの連邦地方裁判所でも同様の判決が出ていて、トランプ政権に大きな痛手となっています。今回の裁判の原告は、全米黒人地位向上協会(NAACP)、プリンストン大学、そしてマイクロソフト社でした。人権擁護の観点だけでなく、不法移民やその子どもたちが、アメリカ社会の発展に大きな力になっている現状への認識があるのです。
 一方、最近、テキサス、アラバマ、アーカンザス、ルイジアナ、ネブラスカ、サウスカロライナ、ウエストバージニアの7つの州が連邦政府を裁判所に訴えました。「DACAを廃止しろ、大統領は公約を守れ」ということで。今後どうなっていくのでしょうか。保守層の人たちにしてみると、言葉ばっかりで何もできない大統領にいらついている、ということのようです。
 今回の旅で、残念ながら、トランプ大統領のことを良く言う人には一人も会いませんでした。知り合いのアンディおばさんは、前は共和党を支持していたのですが、久しぶりに会ったら民主党支持に変わってました。前回の大統領選挙ではヒラリー・クリントンを応援し、開票日当日は、自宅でパーティーを開いてみんなでテレビの開票速報を見たのだそうです。「ヒラリー敗北の色が濃くなるや、みんなシンッとしてそそくさと帰っちゃったのよ」、と言っていました。「今度、北朝鮮と会談するんでしょ、私ね、キムジョンウンがトランプに毒もってくれないかなあって思ってるのよ、ホントよ!」、とおおらかに笑いながら言ってました。。。。

(武庫川ユニオン機関紙5月号より掲載)


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