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カリフォルニア見聞記(アメリカの社会と労働者事情)(4)

地球温暖化とアメリカの労働組合


 しかし、すっごい暑さですね。皆様、体調は大丈夫ですか?地球温暖化が現実のものとして肌で感じられるようになってきてしまいました。地球の平均気温が工業化の進展とともに上がり続けていることは事実です。世界中の科学者は、その原因が人間活動により排出される二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスである、という共通認識に達しています。
 ところが、アメリカのトランプ大統領は、地球温暖化は「でっちあげだ」と言い切り、地球温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」からの離脱を表明。オバマ前大統領が進めた地球温暖化対策で打撃を受けてきた石炭産業の復活を宣言し、他の化石燃料と比べて二酸化炭素の排出が多いと言われる石炭の使用を増やすため、火力発電所の二酸化炭素排出規制を見直しました。さらに、太陽光パネルの輸入に対する関税も引き上げました。このようなトランプ大統領の政策は、石炭産業に働く多くの労働組合員の支持を集めてきたことも事実です。
 そんな中、今年3月、サンフランシスコで、”Climate Change and Labor: Challenges and Opportunities(気候変動と労働者:課題とチャンス)”という集会に参加しました。International Longshore and Warehouse Union(日本で言う全港湾)の会館に、組合関係者や環境活動家が集い、クリーンエネルギー経済への移行が労働者にもたらす影響や、労働組合はどう対処すべきか、労働者の不安解消のための政策や戦略、などについてパネルディスカッションが行われました。United Autoworkers(全米自動車労組)、International Brotherhood of Electrical Workers(アメリカ電気業組合)、公務員を中心にしたService Employees International Union(全米サービス従業員労働組合)、United Steel Workers(全米鉄鋼組合)、および環境問題の活動家と研究者がパネリストとして登壇しました。
 炭鉱労働者を始め、地球温暖化防止対策の中で雇用の危機にさらされている人たちはたくさんいます。そのような労働者の多くが、雇用を守り、生活を守るために、トランプ大統領を支持し、結果として、アメリカが国際社会から背を向け、未来への責任を放棄することを後押ししているのです。一概に非難できない難しい問題です。とはいえ、パネリスト全員が、地球温暖化は深刻な問題である、という共通認識を持ち、そのために産業の変革は必要、ということで意見は一致しました。
 パネリストの一人から招かれて、テスラの労働者が登壇しました。テスラは、カリフォルニアに本社を置き、電気自動車を開発、製造しています。彼は、(国は忘れましたが)アフリカからの移民で、テスラで働くことで地球温暖化防止に貢献できることをとても誇りに思っているそうです。しかし、テスラには労働組合がありません。組合の必要性を痛感したのは、彼自身が労働災害にあった時。以来、テスラに組合を結成する活動に取り組んでいるそうです。
 省エネルギーやクリーンエネルギーに対する社会的要請から生まれてくる新しい会社は、テスラのように、労働組合を持たないことがほとんどです。一方、民間で労働組合が組織されているのは、エネルギー多消費型の旧い会社や産業が中心でした。地球温暖化防止の流れの中では、今後、雇用の確保は難しくなってくるでしょう。討論の結論として出されたのは、新しい産業、企業での組織化の必要性でした。
 労働組合が存在することで、このような企業・産業の健全な発展を促すことができ、また今後、縮小していくであろう旧い産業で働く組合員をこのような新分野で受け入れることができるようにする、ということでした。実際、アメリカの労働組合は、旧来の枠の外への組織化をすすめていて、全米自動車労組は、大学等で働く研究者をどんどん組織化している、という話もありました。
 ちなみに当初、石炭労働者に歓迎されたトランプ大統領の石炭復活政策ですが、天然ガスの安値に押されて、なかなか実効が出ていないようです。そればかりか、私が滞米中に行われたペンシルベニアでの上院議員選挙では、石炭労働者の組合は民主党の候補者を支持し、共和党は議席を得ることができませんでした。
 さて、パネルディスカッションは「組織化頑張ろう」という感じで終了しましたが、トランプ政権下での労働組合への逆風はすさまじく、集会でもJanus裁判への懸念が出されていました。公務員のJanus氏が保守系団体の支援を受けて、労働組合を相手に起こした裁判で、この原稿を書いているちょうど一週間前、2018年6月27日、数的に保守系優位の最高裁判所はJanus氏を支持する判断を下しました。この裁判については、別途ご報告したいと思います。
 さて、集会が終わって、ホテルまでは路面電車で帰りました。運賃は社内で払うのですが、おつりが出ないのにうっかり小銭を用意していなくて困っていたところ、そばにいた黒人女性が「いくら足りないのよ?」と声をかけてきました。そんな知らない人にお金もらうなんて、と躊躇している私に、「いいからこれで払いなさいよ」と車内中響き渡る大声で払ってくれました。よく見るとさっきの集会にいた女性だな、と思い、「ありがとう。私たち組合員だもんね。仲間だね。」というと、満面の笑みで肩を抱いてくれました。
 彼女は、もともと地下鉄の運転手だったそうですが、自動運転化に伴い、地下鉄をやめてトラックの運転手になったそうです。彼女も技術の進歩とともに、職を変えることを余儀なくされた一人です。トラック運転手にもいずれロボットが導入されるかもしれない。そこで雇用を失う人がいても、組合全体で助けることができるようでありたい、と思います。知らない人にも路面電車の運賃を出してあげる優しさを持って。


温暖化集会 Climate Change and Labor サンフランシスコ International Longshore and Warehouse Unionにて 2018年3月12日撮影


(武庫川ユニオン機関紙7月号より掲載)



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